薄型腕時計の現在形「ブルガリ(BVLGARI) オクト フィニッシモ オートマティック BGO40CXT (103368)」2024年11月18日
2024-11-18 11:00
今回のエバンスブログは、「ブルガリ(BVLGARI) オクト フィニッシモ オートマティック(Octo Finissimo Automatic) BGO40CXT (103368)」をご紹介します。自動巻きで5.5mmという超薄型で、独特なフォルムにつややかなセラミック製ケース&ブレスレットが印象的な1本です。
(今回の時計:ブルガリ「オクト フィニッシモ オートマティック」BGO40CXT (103368))
1、ブルガリ ~腕時計も本格派~
(公式サイトではジュエリー、ウォッチ、香水などを扱う 出典:ブルガリ公式サイト )
1884年にイタリアのローマで誕生した「ブルガリ」。大胆かつ洗練された作風で知られ「色石と言えばブルガリ」と称賛される世界5大ジュエラーの一つです。2011年にLVMHグループに買収され、現在に至ります。
腕時計への参入は、1975年の顧客向けデジタル時計が始まり。1977年の「ブルガリ ブルガリ」発売後、1980年代はスイスに製造拠点を設立。2000年代に「ダニエル ロート」、「ジェラルド ジェンタ」の著名ブランドや、ケース,ブレスレット,ダイアル,ムーブメントなどの専門会社を次々と傘下に治めます。
2010年に「ウォッチメーカー宣言」を行い、自社製のムーブメントを発表。2012年にジェラルド ジェンタのデザインを元にした八角形フォルムの「オクト」を発売。2014年に誕生した上位機種「オクト フィニッシモ」シリーズで世界最薄記録を次々と打ち立てるなど、本格的な腕時計を手掛けるブランドとしても存在感を高めてきました。
ちなみに、ウォッチ部門のトップとして、その成長を支えてきた立役者のひとりが「グイド・テレーニ」氏。2021年からは新天地となる「パルミジャーニ・フルーリエ」のCEOとして注目作をリリースし続けています。
2、フィニッシモ “最薄”を振り返る
現在、オクトは、薄型でスポーティーな「オクト フィニッシモ」と、丸みを帯びてドレス寄りの「オクト ローマ」の2シリーズが存在します。
「フィニッシモ」は、イタリア語で「超」、「極上」といった意味。2014年のトゥールビヨンを手始めに、様々な機構での世界最薄の時計などをリリース。2024年に10周年を迎えています。
ここで、オクト フィニッシモの「最薄の歴史」を振り返ってみます。(※寸法はケースの厚さ、6桁の数字はメーカー品番)
(最薄記録の時計たち(一部): 2014年 トゥールビヨン(103016 )、2017年 自動巻き(102713 )、2019年 自動巻きクロノ(103068 )、2020年 自動巻きトゥールビヨン クロノ(103295 )、2021年 自動巻きパーペチュアルカレンダー(103200 )、2024年 機械式時計(104081 ) 出典:ブルガリ公式サイト)
- 2014年 【トゥールビヨン】(重力誤差を修正する複雑機構) 5.00mm 手巻き (103016)
- 2016年 【ミニッツリピーター】(音で時刻を知らせる複雑機構) 6.85mm (103015)
- 2017年 【自動巻き】5.15mm (102713)
- 2018年 【自動巻きトゥールビヨン】3.95mm (102937)
- 2019年 【自動巻きクロノグラフ】(GMT付き) 6.90mm (103068)
- 2020年 【自動巻きトゥールビヨン クロノ】7.40mm (103295)
- 2021年 【自動巻きパーペチュアルカレンダー】(永久カレンダー) 5.80mm (103200)
- 2022年 【機械式時計】1.80mm (103611)
- 2024年 【機械式時計】1.70mm (104081)
2022年の機械式時計など、いくつかの記録は後に更新されていますが、9つの世界最薄記録を積み重ねたというのは、ムーブメントを含めた総合的なウォッチメーカーとしてのブルガリの本気度と技術力を示しているのではないでしょうか。
中には極少量&超高額という雲上モデルもありますが、自動巻きやクロノグラフGMTのように、通常モデルとして展開されている時計も存在します。今回の時計は、2017年に5.15mmの自動巻き薄型記録を達成したチタンモデル(102713)の素材違いで兄弟モデルと言える1本です。
3、今回の時計を見てみましょう
(ブルガリ「オクト フィニッシモ オートマティック」BGO40CXT (103368)。セラミック素材で、ケース径40mm、厚さ5.5mm、重さ約99g)
では、今回のオクト フィニッシモの時計を見てみましょう。ケースとブレスレットは硬く傷のつきにくいセラミック素材。つやあり(ポリッシュ)仕上げが基調となっています。5.5mmの薄型ながら円と四角で組み合わされた110面ものメリハリある造形は、薄いのに立体的で、従来のドレッシーな薄型時計とは異なるダイナミックさがあります。
(ケースやブレスなどの「つやあり」部分とダイアルなどの「つや消し」部分の違いが好対照)
ダイアルはマット仕上げのブラック色、くり抜かれた時分針やインデックスなどはつやのあるブラックカラーで、メリハリのあるオールブラック仕様となっています。デイト表示がないシンプルな文字盤上で、7時位置に配置されたスモールセコンドがポイントとなっています。
(薄型自社製ムーブメントBVL138、動力となるゼンマイを巻き上げるローターはプラチナ製)
シースルーバックから見えるムーブメントは自社製BVL138。ムーブメントの厚さはわずか2.23mmで、比重が高く巻き上げ効率が高いプラチナ製のマイクロローターを備えた自動巻きです。ムーブメントの直径は36.6mmと大きめで、薄型ながら60時間のパワーリザーブを備えます。
(セラミック製の両開き式バックル。折り畳みパーツがきれいに収まる仕様)
正面から見た時に、ブレスレットの横幅が広いのもオクトの特徴。ケースとの一体感が高まり、スポーティーな印象を加えます。一方、横から見たブレスレットは薄型で、両開きバックルもセラミック製です。両開きのパーツ部分がきれいに収まるようブレスの裏に窪みがあり、細かい配慮を感じます。ブレスレットの各コマの長さが短いこともあり、装着感は良好です。
そして、こちらの時計はブレスレットの長さ約20.5cmで重さは約99gです。ベルトでなくブレスレットの機械式腕時計でこの数値というのは、なかなかの軽量です。ちなみに、ブレスレットの長さが同じ位のロレックス サブマリーナ(Ref.124060)は約159gでした。
(つややかなケース&ブレスレットで華やかな印象も。 腕回り16.5cmのスタッフが腕に乗せてみました(ジャケパンやカジュアルならさらに合いそう))
全体が「つやあり」仕上げのため、少し華やかな印象があるこちらの時計。シャネル J12 黒セラミックに近いキラっとした素材感です。今回のポリッシュ仕様はすでに生産終了のようですが、仕上げ違いのマットな黒セラミック(103077 )、厚さ5.15mmでさらに薄いチタン(102713 )、厚さ6.4mmのステンレス(黒 103297 、青 103431 )など、落ち着いた雰囲気の類似モデルが現在も販売されている模様です。
(ケース裏側に「BGO 40 C XT」が刻印、ワランティカードのSAPコード欄に商品番号「103368」が記載)
なお、現在、ブルガリで型番や商品番号にあたるものは2種類あるようです。この時計の場合、ケースに彫られているのが英文字で始まる「BGO40CXT」、ワランティ(保証)書類の”SAPコード”欄に記載されているのが6桁の数字「103368」です。ブルガリ公式サイトでも、商品番号としてこちらの6桁の数字が使われているため、ブルガリ探しの際は「6桁の数字」でWEB検索すると良さそうです。
4、薄型モデルの現在形を示す1本
2024年10月末頃、YouTuberのヒカキンさんがインスタグラムで着用姿を披露し、話題となった腕時計をご存じでしょうか?「リシャール・ミル」の超薄型限定モデルです。(2022年発表、RM UP-01フェラーリ)。手巻き式&時間表示だけのシンプル仕様で、2.6億と言われる金額も凄いのですが、そのケースの厚さはなんと1.75mm。クレジットカード(厚さ0.76mm)およそ2枚分という驚異の薄さです。
2022年にブルガリが「フィニッシモ ウルトラ(10本限定)」で打ち立てた「機械式腕時計の世界最薄」記録1.80mmを、そのすぐ後に塗り替えた時計でもあります。
(リシャール・ミルの超薄型モデル 出典:リシャール・ミル公式サイト コンスタンチン・チャイキンの超薄型モデル 出典:コンスタンチン・チャイキン公式サイト )
その後、ブルガリは、2024年に1.70mmの「フィニッシモ ウルトラ COSC (20本限定)」で再び世界最薄の座を奪還。ところが、その数ヶ月後にロシアの独立系時計メーカー「コンスタンチン・チャイキン」が厚さ1.65mmという世界最薄のプロトタイプ(ThinKing)※を発表、再び歴史は塗り替えられることとなりました。(※こちらは試作品で、巻き上げが外部ユニット式)
(自動巻きで厚さ4.3mmを実現した超薄型ピアジェ(G0A45123) 出典:ピアジェ公式サイト 今回の時計の兄弟モデル:2017年自動巻き最薄記録のチタンモデル(5.15mm厚、102713) 出典:ブルガリ公式サイト ))
機械式の薄型腕時計は、ピアジェ、ブランパン、ジャガー ルクルトなど、名門ブランドが昔から腕を振るってきたジャンルの一つ。複雑機構を凝縮させるのとは違った試行錯誤やロマンがあるのでしょう。
今回ご紹介した「オクト フィニッシモ オートマティック」は、先の超ド級モデルたちとは異なるベーシック機能の通常モデルですが、十分に薄く、軽く、独特な個性もあり、機械式の薄型腕時計の現在形を見せてくれる1本ではないでしょうか。
→BVLGARI(ブルガリ)「オクト フィニッシモ オートマティック (USED)」
(BGO40CXT (103368)、40mm径、60時間パワーリザーブ、30m防水、ブレス長さ約20.5cm、約99g)