近年増え続けるオメガの独自素材について
2024-10-28 11:00
エバンスの大貫です。今回はオメガの独自素材についてご案内したと思います。
近年では、各時計メーカーにおいて金属素材を独自で開発する流れがありますね。例えば、ロレックスの『エバーローズゴールド』、ウブロの『キングゴールド』や『マジックゴールド』、ランゲ&ゾーネの『ハニーゴールド』、パネライの『ゴールドテック』、グランドセイコーの『エバーブリリアントスティール』、ショパールの『ルーセント スティール 』など、生産技術向上によって素材の差別化が生まれています。
そもそもオメガでは、古くから時計素材の研究は進んでおり、1970年には強化スティールをタングステンでカバーした超硬ケース(ハードメタルケース) 、1982年には 当時加工が困難とされていたチタン素材(世界初は1980年のポルシェデザイン)を時計ケースに用いる技術力もありました。
そんな中、オメガに関しては独自素材のバリエーションが増え続け、様々な素材が展開されていますので、特徴的な素材をご紹介して参ります。
セドナゴールド
オメガは2012年から、鮮やかな色合いを持つ独自のローズゴールド合金、18Kセドナ™ ゴールドを使用しています。この名称は、軌道を回る小惑星セドナに由来します。この星は、太陽系の中で最も赤い星と言われます。セドナ™ ゴールドは、ほかの18Kゴールドが持つ標準的な特徴をすべて備えながら、色や輝きの経年変化に強いという特長があります。その独特の配合には、色と安定性のために、銅とパラジウムが加えられています。
オメガ公式サイトより
2012年に発表された【セドナゴールド】。ピンクゴールド(ローズゴールド)系の18金ゴールドです。ロレックスの「エバーローズゴールド」、ウブロの「キングゴールド」と同じく、酸化による変色を防ぐことを特徴とした素材となっています。
ゴールド素材のなかでも特にピンクゴールド(ローズゴールド)は、赤くするため“銅”が多く使われており、永く使用することで酸化し、イエローゴールドの様に変色してしまいますので、各メーカーが独自で対応しています。
カノープスゴールド
オメガは2015年から、独自の18Kホワイトゴールド合金であるカノープスゴールド™を使用しています。カノープスゴールド™は100%貴金属であり、ほかの18Kゴールドが持つ標準的な特徴をすべて備えながら、眩い輝き、白さ、優れた耐久性という特長を持っています。そのため、高級時計やダイヤモンドをセットしたタイムピースに最適です。
オメガ公式サイトより
この合金は、カノープスという明るい恒星にちなんで名付けられました。太陽と比較した場合、この星の大きさは71倍、明るさは1万倍です。カノープスはその明るさと位置により、多くの宇宙機関にとって重要な基準点となりました。
その独特の配合には、色と安定性のために、プラチナ、ロジウム、パラジウムが加えられています。
【カノープスゴールド】は2015年に開発されたということですが、認知され始めてきたのは2021年ごろからでしょうか。ホワイトゴールド系の独自素材ですが、見た目ではあまり分かりません。こちらも色味を長くを安定させる点が特徴と言えます。
ムーンシャインゴールド
2019年、オメガは独自の18Kイエローゴールド合金であるムーンシャイン™ ゴールドを開発しました。ダークブルーの空に輝く月の光からインスピレーションを得た18Kムーンシャイン™ ゴールドは、従来の18Kイエローゴールドよりも淡い特徴的な色合いを持ち、色や輝きの経年変化に強いという特徴を持っています。その独特の配合には、色と安定性のために、シルバー、銅、パラジウムが加えられています 。
オメガ公式サイトより
2019年に発表された【ムーンシャインゴールド】。イエローゴールドよりも淡い色合いで、こちらも経年変化による変色を抑えることが特徴。ヴィンテージのような雰囲気が感じられるカラーです。
ブロンズゴールド
ブロンズゴールドは、美しい外観と色合いを生み出すために特別に開発されました。その特殊な配合から、肌に直接着けることのできるブロンズ合金となっています。この唯一無二の合金はゴールド(37.5%)などの貴金属を含み、9Kのホールマークが刻印されています。18Kムーンシャイン™ ゴールドと18Kセドナ™ ゴールドのちょうど中間にあたる独特の色合いを出すために、パラジウムとシルバーも混合されます。柔らかなピンク色を湛えるこの合金は、非常に優れた耐食性を持ち、酸化による緑青が生じません。そのため長い時間を経てゆっくりと色合いが深まり、美しい天然のつやが生まれます。ブロンズ製ウォッチと革新的な素材がお好きな方には、嬉しいニュースではないでしょうか。
オメガ公式サイトより
2019年から使用されている【ブロンズゴールド】。一般的なゴールドである18金ではなく、『9金』となります。金の割合が少ない金属のため、他のゴールドモデルよりも価格を抑えた設定です。
ブロンズ素材の特徴として、銅が酸化することで生成される青サビ、“緑青(ろくしょう)”による経年変化を特徴としていますが、その変化を緩やかにし、 ゴールドの持つ上品さと ブロンズの持つヴィンテージの風合いを併せもつバランスの取れたオメガの独自素材です。
O-MEGAスティール
O‑MEGAスティールは新しい高性能ステンレススティール合金です。加圧エレクトロスラグ再溶解という独自のプロセスにより、比類ない艶と輝きを持つ高純度の素材を作ることができました。ニッケルを取り除き、窒素とマンガンを加えたO-MEGAスティールは、従来のスティールに比べてホワイトの色合いがより明るく、強度や硬度も40〜50%高くなります。非強磁性素材であると同時に、独自の配合により優れた耐食性を実現し、外観を長持ちさせることができます。
オメガ公式サイトより
一般的に高級ステンレスと呼ばれる『316L』や『904L』と違い、ニッケルを含ほとんど含まず、 高い強度と美しい白さと光沢が特徴。 また耐食性にも優れ、長期にわたり美しい外観を維持することが出来るようです。
【O-MEGAスティール】は、6000mの防水性能を誇る「プラネットオーシャン・ウルトラディープ」に使用されていますが、素材の特性上高い気密性を確保できることから、ヘリウムエスケープバルブを持たない仕様となっています。
オレンジゴールド
現在は採用されていませんが、2015年に発表された【オレンジゴールド】という素材があります。
その名の通りオレンジ系の明るいゴールドカラー。通常のゴールド素材にさらにプラチナをくわえることで実現。一般的なピンクゴールドやオメガのレッドゴールドより硬度は高く、そしてより傷が付きにくい。さらに年月が経っても色が褪せにくいという。
今後の展開を予想
ゴールド系統では一般的な3カラーの独自素材+ブロンズ系が発表され、 最近としてはステンレス系が発表となっていますが、 個人的に今後の期待としましては、【チタン】系でしょう。
チタンの独自素材としてはセイコーの「ブライトチタン」「ブリリアントハードチタン」。高い硬度と、ステンレスに近い色 シャネルの「チタンセラミック」、IWCの「セラタニウム」。またロレックスの「RXLチタン」においては、グレード5チタンの一種とされているものの、色味がグレード2チタン(純チタン)に近しいため、独自の合金と言えます。
期待する特徴は、「ステンレスの様な色合いの再現」、「表面硬度の向上」、「加工性の向上」でしょうか。またオメガでは既にチタンとアルミの合金『ガンマチタン』を使用した非常に軽量で高い硬度を持つ非常に高額なモデルも展開していますので、「軽さ」についても期待できそうですね。