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カルティエのリューズに宿る美学/“カボション”について

2026-03-03 11:00

カルティエの時計を手に取ったとき、多くの人がまず目を留めるのが、リューズ先端にあしらわれた小さな青い石です。“カボション”と呼ばれるこのパーツは単なる装飾ではなく、カルティエというブランドの成り立ちや美意識を象徴する重要なディテールでもあります。

では、この宝石は一体何なのか。詳しく解説したいと思います。


なぜカルティエの時計のリューズには“石”が付いているのか

多くの高級時計ブランドが、リューズを機能部品として割り切る中、カルティエは早くから宝石を組み込んできました。その理由は明確で、カルティエが時計ブランドである以前に、世界的なジュエラーであるからです。

リューズに宝石を配することは、視覚的な美しさだけでなく、「時計そのものを完成された造形美として仕上げる」というカルティエの思想を表しています。

カルティエにおける「カボション」とは

「カボション(Cabochon)」という言葉は、中世フランス語で「頭(=突起・丸み)」を意味する語に由来しており、リューズ先端に“頭のように据えられた象徴的な突起を意味します。

また「カボション」は、宝石を丸く滑らかに研磨したカボション・カットを指す宝石用語としても使用されています。

カルティエでは、スピネルやサファイアといった宝石がリューズ先端に配されている仕様そのものを、総称して「カボション」と呼びます。たとえ厳密な半球形でなくても、リューズ先端に宝石をセットした意匠であれば「カボション」と表現されるのが特徴です。


カルティエが採用する“スピネル”とは

カルティエの多くのステンレスモデルに使われている青い石がスピネル。 天然石ではなく、人工スピネルが使用されています。

モース硬度は7.5~8とされ、ダイヤモンド(モース硬度:10)やサファイア(モース硬度:9)に次ぐ硬さで、装飾美と耐久性に優れています。

ここで重要なのは、「人工=価値が低い」という誤解です。

スピネル自体はもともと天然石として存在する宝石で、歴史的にはルビーと混同され、王侯貴族の宝飾品にも使われてきましたが、そのうえでカルティエは、あえて人工スピネルを選択しています。

サファイアの様に美しい人工スピネル

人工スピネルが選ばれる理由

  • 色味が均一で個体差がない
  • 傷や欠けに強く、耐久性が高い
  • 長期間使用しても美しさが変わりにくい

リューズは日常的に指で触れ、衝撃を受けやすいパーツです。そのため「希少性」よりも「常に美しくあること」を優先した人工スピネルは、非常に理にかなった素材と言えます。


人工スピネルと天然サファイアの使い分け

カルティエの時計では、すべてのモデルに人工スピネルが使われているわけではなく、 ケース素材によって、宝石は明確に使い分けられています。

ステンレス&コンビモデル:人工スピネル

一部例外はありますが、ステンレスモデルやコンビ仕様もモデルには人工スピネルが使用されています。見た目はサファイアと変わらず、耐久性が高いため、日常使いに最適。 ブルーだけでなくピンクなども時計のとのバランスにより変更されます。

ステンレスケース×ピンクスピネルカボション

金無垢モデル:天然サファイア

イエローゴールドやホワイトゴールドなど、金無垢のケースには天然石のサファイアがセッティングされます、ケース素材との価格のバランスが重視されています。見た目が似ていても、明確に区別されています。

ダイヤ付き金無垢モデル:ダイヤモンド

ゴールドケース、かつベゼル等にダイヤモンドがセッティングされた時計には、それに合わせて、カボションにもダイヤモンドが使用されます。全体的なバランスに合わせて素材が選ばれています。

ダイヤモンドカボション

その他のカボション

一部の商品に関しては、上記以外の素材も使用されています。

【ブラックセラミック】

オニキスの様な印象のブラックセラミックは、高級感と耐久性を両立しており、ブラック文字盤に合わせてメンズモデルに使用されるケースがあります。

【ラバー】

数は少ないものの、過去のモデル(クロノスカフ)に使用されたラバー・カボション。ストラップのラバー素材に合わせて採用されています。

【メタル】

スポーツタイプの一部モデル(ロードスター、パシャCなど)に採用されたメタル・カボション。石ではないため、カタログ上は“カボション”の記載がありまません。耐久性を重視した仕様です。


小さな宝石に宿るカルティエの哲学

カルティエのリューズに配された宝石は、 天然か人工かという単純な基準で語るべきものではありません。

人工スピネルには、均一な美しさと耐久性という明確な役割があり、 ゴールドモデルにのみ天然サファイアを用いるのも、ブランドとしての一貫した美学の表れです。

それは青く輝く石であったり、時には別の素材であったりしますが、どのモデルにも共通して「カルティエらしさ」を感じさせます。


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