エバンスブログ

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ブランパン「フィフティファゾムス バチスカーフ」

2022-08-09 11:30

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本日はブランパンから「フィフティファゾムス」のご紹介です。

ブランパンとは

1735年創業、今から287年もの昔。現存する「世界最古のウォッチメーカー」それがブランパンです。首都であるスイスのベルンの近くに位置する小さな町、”ヴィルレ”にてはじめての工房を構え、1859年にはジュウ渓谷へ工房を移動します。

ヴァレ・ド・ジュウと呼ばれる渓谷は、フランスとの国境のジュラ山脈近くにあり、この地は冬になると大雪が降って都市から孤立する厳しい状況にありました。そのため時計職人だけでなく農家の人々までもが、時計の部品づくりを行っていました。何年も時が経つにつれ、時計職人の技術が洗練されていき、小さな部品だけでなく、なんと大変複雑なコンプリケーションの製作までも手掛けることが可能な所まで彼らの技術は進化していたのです。以来、ジュウ渓谷の時計職人が凄いという名声が瞬く間に広がり、主にジュネーブの時計ブランドから時計製作の依頼が入る程、名を広めて行きました。

「エボーシュ」。この用語を聞いたことがある方も多いと思いますが、今一度おさらいしていきます。エボーシュとはフランス語で下書き・原案を意味し、時計のムーブメントを途中まで作ったもの、汎用ムーブメントのことです。ジュウ渓谷の時計職人たちが心をこめて製作したコンプリケーションなどを搭載したムーブメント(エボーシュ)を主要ブランドが買付、そのブランドで製作した各パーツを取付・組立を行い、ブランド名を記載して販売をするということがこの時代の日常でした。

この頃流行していた腕時計に、ブランパン社の一部であるルイ-エリゼ・ピゲ社によって手掛けられたエボーシュが使われていることは、あまり知られていません。というのも、各主要ブランド共に、現在のように製造過程を公開したりしていませんでしたし、ムーブメントを気にする人は殆どいなかったのでしょう、特に中身に関しては口外することなく、完成品を自身のブランドの製品として売り出していたためです。近年になってようやく注目されるようになり、何世代にも渡って継承して来た伝統ある時計製造業に携わったすべてのジュウ渓谷の人々を同社は大切にしており、彼らは今もブランパンのアトリエで時計づくりをしているのです。

1961年にSSIH(Societe Suisse pour Industrie Horlogere) へ。SSIHとは、”スウォッチグループ”の前身で、1931年創業、オメガ・ティソ・レマニア等を擁しており、1983年にロンジンを持っていたASUAGと合併、1998年にスウォッチグループと改名されました。現在はブランパンやブレゲ、オメガなど主要ブランドと共に、エボーシュメーカーのETAやフレデリック・ピゲなどの大手も傘下にあり、LVMH、リシュモンと並ぶ三大グループのひとつ、それがスウォッチグループです。ブランパンは大きなグループに属しながら、伝統を大切にし多くの名作を生み出しています。 世界最古であり革新こそ伝統であるという同社の方針を軸に、これからも我々を魅了していくことでしょう。

フィフティファゾムスとは

1953年に初登場したブランパンのダイバーズウォッチコレクションです。実は、ロレックスのサブマリーナと共に「世界初のダイバーズウォッチ」の二大元祖と呼ばれているのがブランパンのフィフティファゾムスで、このモデル名の”ファゾムス”とは水深の単位のことであり、50ファゾムスは約91.45mの防水性を持つという意味です。同社はフランス海軍のためにこのモデルを製作し、黒い回転ベゼルと黒い文字盤に太めの針で大き目の数字に夜光塗料をたっぷりと塗って、視認性を高めたモデル、これが今日のダイバーズモデルの原型となりました。

映画007のジェームス・ボンドが、ロレックスのサブマリーナを着けていたことで有名になったように、ブランパンのフィフティファゾムスも「沈黙の世界」というドキュメンタリー映画で、フランスの海洋学者であるジャック=イヴ・クストーが着用し、カンヌ映画祭で”パルム・ドール賞”(最優秀作品に与えられる最高の賞)を受賞したことから、知名度がぐんと上がったのです。

2007年に”Fifty Fathoms Automatique”(フィフティファゾムス オートマティック)が復刻され、1953年のオリジナルを再現した丸みを帯びたサファイアクリスタル風防に、同じ仕様でふくらみを付けたサファイアクリスタル製のベゼルを採用、3・6・9・12の数字に三針と日付というシンプルな文字盤に仕上げています。(上写真)三針以外にクロノグラフやトゥールビヨンも製作しており、レアな限定モデルも存在します。ストラップはステンレスとチタンのメタルの他、セイルキャンバス・ファブリック、NATO、カーフというバリエーションです。このモデルはまだエバンスには一度も入荷したことがないのですが、写真でこの可愛らしいフォルムを見た瞬間心を奪われ、私自身ブランパンの中で一番好きなモデルとなり、いつかは手に入れたい時計のひとつなんですよ。

2013年に今回ご紹介する”Fifty Fathoms Bathyscaphe”(フィフティファゾムス バチスカーフ)は”デイリーユース”というコンセプトと共に復刻され、女性でも気軽に使えるよう、白いセラミックベゼルの小さめサイズも展開しています。素材やストラップバリエーションは上記モデルとほぼ同じですが、見た目の違いは明確で、フィフティファゾムスオートマティックは全体が丸くステンレスモデルはピカピカの鏡面仕上げなのに対し、バチスカーフはすべて艶消しの仕上げでシャープな印象です。正に、高級なヘリテージダイバーズと現代的なカジュアルダイバーズという表現がぴったりですね、このふたつの素晴らしいダイバーズウォッチは。

フィフティファゾムス バチスカーフとは

フィフティファゾムス「BATHYSCAPHE(バチスカーフ)」とは、ギリシャ語で深い船という意味で、スイスのオーギュスト・ピカールとその息子、ジャック・ピカールによって発明された小型の有人深海探査潜水艇のことです。1956年に登場したのが最初で、フィフティファゾムス60周年を記念して、2013年に復刻したのが今回ご紹介するモデルです。緩やかなカーブを描いた文字盤に、真っ直ぐで長方形の針を備えた普段使いもできるダイバーズウォッチ、それがフィフティファゾムス バチスカーフです。

特筆すべきはスペックなのですが、ダイバーズウォッチ(防水300m)なのに裏スケ(そして耐磁)という我々の概念を覆す裏蓋の仕様になっていること、それが私が一番お伝えしたいことです。300m防水のダイバーズウォッチといえば、ものすごい水圧に外だけでなく中の機械も耐えれるよう、裏蓋もガチガチの素材で覆い隠しているモデルしか私は今まで見たことがありませんでした。ですから、初めてこのモデルを見た時に防水時計とは思いませんでしたし、ステンレスなのにこんなに軽くて着けやすいのにダイバーズウォッチなの!?と何度も手に取って確認したほどです。

そしてもうひとつの注目する事項は、持続時間です。従来であれば48時間か長くても72時間の設計が多い中、このフィフティファゾムスバチスカーフはなんと、120時間(5日間)ものパワーリザーブを備えているのです。フィフティファゾムスというモデルは、私の長い時計業界人生の中で、ここまでの高スペック時計に初めて出会ったという一言に尽きますね。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
ブランパンは薄型スリムドレスウォッチのヴィルレはたまに入荷をするものの、私が一番好きなフィフティファゾムスは実は初入荷で、私自身待望の一本でした。
この記事を読んで気になられた方は是非、一度お手に取ってご覧いただきたいです。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

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