近年評価が高まるカルティエの最上級モデル“CPCP”とは
2023-08-07 11:30
エバンスのオンラインショップ担当の大貫です。
最近はラグスポ(=ラグジュアリー・スポーツ)ブームも落ち着き、ロレックスを含め、比較的購入しやすい価格帯となってきたことは喜ばしいところです。一方で、継続的に相場の上昇傾向が続いているモデルも多くあります
その中で、今回は近年評価が高まっているカルティエの「 CPCP=コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ」をご紹介したいと思います。
『CPCP』とは?
1998年~2008年に生産されていた「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ」。『CPCP(シーピーシーピー)』、または『プリヴェ』と呼称され、歴史的価値の高いカルティエの名作を蘇らせらせた カルティエの最上級ライン。単に古典的な外見を表現するのではなく、見えない内面においても魅力をもたせるコレクションでした。
1998年に一部モデルが発表。当時は“プリヴェ”の名は無く、コレクションとして誕生するのは翌年の1999年からとなります。カルティエ公式の説明としては1998年や1999年など時期によって見解が変わるため、正解は難しいところですが、現在は「1998年」ということになっています。
“プリヴェ”は英語でプライベート。CPCPは「カルティエ・パリのプライベートコレクション」という意味となります。時計愛好家に向けて発表された機械式時計コレクションで、発表当時は全23モデルで構成され、当時は販売店も限られるほど少数生産。当初各モデルは『多くとも500個』と言われていました。
カルティエの過去の名作をベースに制作され、特徴となるのはムーブメント。ピアジェやジラールペルゴ、ジャガールクルト、スヴェン・アンデルセン等と共同で開発された機械式ムーブメントは美しく装飾され、多くはシースルーバックから見える仕様となっています。
2009年以降はカルティエの自社製造ムーブメントを搭載した「オートオルロジェリー」コレクションが展開されたことで、コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリは終了。一部はマイナーチェンジにより生産が継続したモデルもあります。
当時のCPCPの人気
誕生以降、プリヴェが「人気で入手困難だったか」と問われると、そのようなことは無く、かつては弊社エバンスの様な並行輸入店にも定価以下で新品が入荷していました。
カルティエの過去の名作を元にしているだけあって、デザインは秀逸で、ムーブメントのクオリティも高い。ただ目を見張るような複雑系ではなかったため、当時は“物足りなさ”を感じるユーザーが多かったように思います。
以下の『タンク アメリカン』は、左がレギュラーモデルで、右がコレクション・プリヴェ。同じホワイトゴールド素材であり、基本的なデザインはほぼ変わりません。
CPCPの特徴と見分け方
似たデザインを多く展開するカルティエ。その中で 希少なCPCP を見分けるポイントをご紹介します。
2段レター
通常モデルと違い文字盤に 「CARTIER PARIS」 の2段表記が目印。一部条件に当てはまらないモデル(タンクサントレ等)もあります。またコレクションプリヴェ発表以前にも一部の手巻モデル(トノー、クラッシュ等)に「CARTIER PARIS」の表示はありました。
コラボムーブ
当時は、ムーブメント専用エボーシュメーカーによる汎用ムーブメントが使用され、スイスの高級ブランドでも自社内で製造するブランドは僅かでした。
フレデリック・ピゲなどエボーシュメーカーのCPCPも一部存在しますが、多くはカルティエが属するリシュモングループ内ブランドとのコラボレーションムーブメントを搭載。ピアジェやジャガー・ルクルトを筆頭に、ジラール・ペルゴ、スヴェン・アンデルセン等と共同開発。一部を除きシースルーバックが前提となるため、ムーブメントの審美性も重要で、独特な装飾も見どころ。
文字盤の装飾
緻密なギョーシェ彫り加工が施されており、文字盤の中心部分には薔薇(花)のモチーフがあしらわれています。
また、文字盤のカラーは「シルバー」のみと割り切った戦略展開でした。
基本は男性向け手巻きモデル
当初のコンセプトは機械式時計の男性向けとして発表しており、基本は手巻きモデル。一部自動巻きモデルもありましたが、ほぼ手巻き式となっています。
なお、後年には手巻式のレディースモデル(トノー・トーチュ等)も発表されています。
素材
ステンレスモデルは存在せず、イエローゴールド、ピンクゴールド、ホワイトゴールド、プラチナのみのラインナップ。
CPCP専用の付属品
当時のボックスはレギュラーモデルと異なり、コレクションプリヴェ専用のボックスが付属します。
革を張ったマホガニー製の大型ボックス。内箱は2段式にとなっており下段には替えベルトや工具などの収納スペースが設けられ、外側にはプリヴェの銘が入ります。それに加えて一部モデル(販売時期にもよるかもしれません)では、ルーペ、携帯用ポーチ、クリーニングクロスが収まったボックスも別途付属することもありました。
CPCP専用デザイン
基本的には既存コレクションのデザインが使用されるCPCPですが、一部モデルは、CPCP専用モデルも存在します。
下記の「タンク・ア・ビス」は、CPCPのみでの展開でした。 1931年に登場したカルティエ初の防水時計「タンク エタンシェ」を現代風へアップデートしたもので、ベゼル4隅のビスと、ボリュームのあるデザインが特徴となっています。
近年の「カルティエ・プリヴェ」との違い
2017年から復活した「プリヴェ・コレクション」は、1年に1コレクションずつ発表する限定コレクションとなっています。
現在(2023年)までに 「クラッシュ」「タンク サントレ」「トノー」「タンク アシメトリック」「クロシュ ドゥ カルティエ」「タンク シノワーズ」「タンク ノルマル」が発表されており、限定数も極僅か。いずれも人気は高く即完売が続いています。
CPCPの再評価の理由
過去のCPCPが再評価されてきた理由には、2017年から復活した「プリヴェ・コレクション」と「コロナ・パンデミック」によるものと考えられます。
「カルティエの最高級ライン」という肩書を持ち、生産数も比較的少ない。2017年から『プリヴェ』の名前が出始めたタイミングで、過去の名作に注目が集まり、徐々に需要が高まっています。
プレCPCPとして発表された1998年のトーチュ・ワンプッシュクロノは、近年の価格の上昇率が高い1本。当時複雑な高級ムーブメントを製造していた Techniques Horlogères Appliquées=THA社製(後のジャケSA、現在のラ・ジュウ・ペレ)の独創的なムーブメントやクロノ機構が再評価されたことで、他のCPCPの評価も高まってきました。
さらに、ご存じの通りコロナ禍の中で、各ブランドの工場の稼働がストップしたことで流通量が激減。資産価値としての需要の高まりからロレックスをはじめ、高級時計の価格は上昇し、特に”ラグスポ”と言われる、ノーチラス、ロイヤルオーク、オーヴァーシーズ等はハイパーインフレのごとく高騰しました。
逆にスタンダード・ウォッチ(特にゴールドモデル)では、急激な価格の上昇は起こりませんでしたが、ラグスポ・ブーム終焉の下降線に並ばず、金相場の高騰もあり、緩やかに価格は上昇しています。
それでも当時の定価よりも低いものも多くあり、今が狙い目のモデルと言えます。元々の個体数も多くなく、市場に出回る数も限られますが、個人的には今注目コレクション。お勧めです。