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時計素材の基本(文字盤編)/第一印象を決める時計の“顔”

2020-09-09 11:00


エバンス オンラインショップ担当の大貫です。今回は【文字盤の材質】についてご案内したいと思います。時計の第一印象を決めるのが「文字盤(ダイアル)」。 文字通り、時計の顔(フェイス)になりますので、時計選びでは重要なファクターと言えます。

オーソドックスなシルバー、スポーティなブルー、武骨なブラックなど、カラーリングによって表情が異なる文字盤ですが、意外と知らないのがその素材。特殊なものならいざ知らず、一般的な文字盤の素材を考えたことはありますでしょうか。

文字盤の基本素材と言えば「真鍮」

真鍮は銅と亜鉛の合金で、 黄銅とも呼ばれる金属。英語では『brass(ブラス)』ですので、こちらの方が馴染みやすいかもしれませんね。“ブラスバンド”というように、トランペットやサックス、トロンボーンなどの管楽器に使用されていたり、5円硬貨の素材にもなっています。

腕時計の文字盤に使用される素材は、ほとんどが真鍮製で、最も使用されています。真鍮のプレートに下地メッキを施し、その上にラッカーなどでの塗装、メッキやPVDで着色するのが一般的です。また、以下に紹介する様な天然素材のベース(土台)にも真鍮は使用されます。

ロレックスの場合、宝石が使用されていない文字盤は真鍮製、宝石がある場合はゴールド製と使い分けがされておりますが、一部例外としてマザーオブパールやメテオライトなどではゴールドの土台が使用されているようです。

ロレックスの真鍮製の文字盤(裏側)

なぜ真鍮が使用されるのか

加工が容易という事が利点で、錆びにくく丈夫な一方、変色しやすい欠点があります。しかし、塗装やメッキ加工をすることでデメリットは無くなりますね。真鍮は他にもムーブメントの地板や、ゼンマイなどにも使用されており、時計を構成する重要な素材となっています。

ロレックスのムーブメントも真鍮製(メッキ加工)

個性的な素材で楽しむ時計の文字盤

カラー以外にも、“素材”によって個性が際立つ文字盤もあります。古典的なモノから、技術の発展による新素材。また天然石や天然素材を使用したもの、豪華な宝石を使用したものなど多種多様。特徴的な文字盤素材がありますので、その一部を紹介したいと思います。

メテオライト(隕石)ダイアル(右)

金属

ゴールドやチタンなど、腐食に強い素材が採用されますが、いずれもコストがかかり、高価なモデルに使われることが多いものとなります。意外にも“ステンレス製ダイアル”というものはあまり聞かないですね。

  • ゴールド
  • シルバー
  • チタン
  • プラチナ
  • オスミウム
ブレゲの文字盤は、ほとんどがゴールド製

非金属

最近では外装に使用される【セラミック】を文字盤に流用するブランドが少しずつ増えてきた印象です。 セラミックやカーボンは、紫外線による劣化が防げます。ポーセリン(陶製)は、アンティークの懐中時計などで見られます。割れやすく、今ではほとんど使用されません。

  • セラミック
  • カーボン
  • ポーセリン(陶製)
ウブロ “カーボン”ダイアル

天然素材

“マザーオブパール” や “シェル”と呼称される貝殻を使用した文字盤は、今では一般的になっていますね。産地によって色合いが異なり、採取部位によっては凹凸等が変化しますので、個体差が大きい素材。各ブランドでよく使われています。またウッドやレザーなども個性的な印象です。

  • マザーオブパール(真珠母貝)
  • ウッド(木材)
  • レザー(革)
  • コーラル(赤サンゴ)
コルム “ウッド ” ダイアル

半貴石(セミプレシャスストーン)

アクセサリーにも使用される鉱石。“石”をスライスして使用しています。こちらも天然素材となるため、一つ一つ色合いや雰囲気は異なります。ただ衝撃に対して割れやすいところがデメリットとなります。

  • マラカイト
  • ラピスラズリ
  • ターコイズ
  • ジェダイト(翡翠)
  • クリソプレーズ
  • ルーベライト
  • オニキス
  • オパール
  • メテオライト(隕石)
  • アベンチュリン
  • タイガーアイ
  • スギライト
  • マラカイト
  • キュープライト
ロレックス “オパール”ダイアル

伝統技術

この辺りはアートの領域になってきます。絵柄を楽しむ文字盤ですね。以外にも『蒔絵』は、ヴァシュロン・コンスタンタンやショパール、ブルガリといった世界的ブランドでも採用されたことがあります。

  • 蒔絵
  • マルケトリ(寄木細工)
  • クロワゾネ(金線七宝)
  • 和紙
ユリスナルダン “クロワゾネダイアル”

色付けの手法

色を塗るといった表面加工にも様々な技法があります。ラッカーでの塗装が一般的。“ラッカー”とは着色された揮発性塗料のことで、溶剤を揮発させることで速乾性が増し、硬くて耐久性の高い塗面になります。漆もラッカーの一種です。古典的なものはエナメル(ホットエナメル、コールドエナメル、象嵌エナメルなど技法は多数)などもあります。

ラッカーは厚みがあるが耐候性(気候の変化への耐性)に優れ、メッキ加工やPVD加工で塗装面を薄くできるため、繊細で高級感を得ることが出来る、

  • ラッカー
  • エナメル
  • PVDコーティング
  • メッキコーティング
  • ハンドペイント(メティエダール)
発色の良いPVD加工のダイアル

各社が今、文字盤に力を入れる理由

時計のケース素材以上に個性が出る文字盤。現在、各メーカーが力を入れている分野が『文字盤』と言えます。2000年頃から時計メーカー各社は、ムーブメントの自社設計や、新たなケース素材の開発などが進み他社と差別化を図ってきましたが、昨今注目されているのが『文字盤』です。

最近では毎年のように、新たな技術を用いた文字盤を見ることが出来ますので、新作時計発表の際は『文字盤』にも注目すると面白いと思います。

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