クロノメーターとは
クロノメーターとは、 スイス公認クロノメーター検査協会、通称C.O.S.C.(Controle Official Suisse des Chronometres)という検査機関の、厳しい規定をパスしたムーブメントに与えられる「称号」。
スイス公認クロノメーター検査協会とは
スイス公認クロノメーター検査協会は、1973年に設立。スイスのラ・ショー・ド・フォンに拠点を置き、スイス製ムーブメントのクロノメーター検査業務を行っている。
その内容をシンプルにまとめると、5つの姿勢差と3つの温度の中、15日間かけて試験を行い、7つの基準をクリアすることで、クロノメーター認定される。平均日差は、ムーブメントのみの状態で、-4秒~+6秒となっている。
現在の「クロノメーター」とは、あくまでも高精度な時計またはムーブメントに与えられた称号であり、船舶上で使用するマリンクロノメーターとは、意味合いが異なってくる。
マリンクロノメーターとは
マリクロメーターとは、揺れる船舶上でも、正しい時を刻む高精度の携帯用時計のこと。
マリンクロノメーターの始まりは、1700年初頭。遠洋での航海する船舶が増加していくと、自分の船の位置を見失うことによる海難事故なども増加していくことになる。
そこで船舶の位置を、海上で正確に把握する方法の開発が急務となったイギリス議会は、「経度法」を制定する。
経度法とは、指定された誤差の基準内で、いかに正確な経度を測定出来るか、その方法を開発したものには、達成した精度に応じて賞金を与えることだった。
天体観測などもその測定方法の一つになるが、複雑すぎるためにもっとシンプルな方法が探し求められる。
白羽の矢が立ったのは、太陽と高精度時計を利用した測定方法である。しかし、当時の高精度時計は振り子時計の為、波のある航海中では正確な時間を知ることが非常に困難であった。
そこで求められたものが、「マリンクロノメーター」である。
様々な時計師たちが、高精度時計の開発に挑んでいく事になる中、イギリスの大工職人の子である時計師ジョン・ハリソンは、温度の変化を補正する部品を使用したクロノメーターを作製。1759年には「クロノメーターH4」という、外径13cm程の当時では非常にコンパクトで高精度な時計を完成させ、経度測定において優秀な成績を残して、賞金を獲得することになる。
船舶上でも、精密に作動する時計が証明されはしたが、シンプルで安価なものとは程遠く、量産化へ向けてマリンクロノメーターの進化は続いていく。
クロノメーター認定とは
さて、マリンクロメーターの量産化が可能となり、天文台などでの精度コンクールが盛んになってくる一方で、懐中時計にもクロノメーター精度検定が実施されるようになると、検定に対する中立的な基準が求められる。
各天文台やスイスの公的機関ではそれぞれの基準を作って検定を実施。その精度が基準内に収まれば、「クロノメーター」という認定を与えていった。
現代に入ると、市販用の新しい検定基準が求められ、1951年には一般時計を検定する、時計歩度公認検定局(B.O.)が設立される。
その後、1973年には時計歩度公認検定局(B.O.)から、スイス公認クロノメーター検定協会(C.O.S.C.)へと組織変更となり、そして1976年にはC.O.S.C.のクロノメーター基準が、ISO規格として定められることとなる。
ロレックス高精度クロノメーターとは
今更だが、ロレックス高精度クロノメーターとは、 2015年よりスタートした、ロレックス社独自のクロノメーター基準。ムーブメントは、スイス公認クロノメーター検査協会(C.O.S.C.)の認定を受けたものを使用する事が前提であり、更に自社内で行う厳しい一連の検査をパスした時計に与えられる称号。
COSC検査との違い その① 検査内容
これまでは、ケーシング前と呼ばれる、時計を組み立てる前の段階で検査が実施されてた。しかし、ロレックスの新しい基準では、ケーシング後に検査を実施。
その内容は、7つの静止姿勢と回転装置で行ない、COSC基準よりも厳しい設定となっている。
この検査の意味は、精度や持続時間、防水検査など、着用状態で最大のパフォーマンスを発揮することを保証するためである。
COSC検査との違い その② 平均日差
具体的な数値としての平均日差は、COSC基準の2倍に匹敵する、-2~+2秒以内という驚愕的な数値にコントロールされている。
ここで、精度について具体的な数値を比較してみる。COSC基準では、ケーシング前の状態で平均日差が−4〜+6秒である。仮に、日々最大の数値の6秒進めば、30日で180秒となり、ひと月で約3分の誤差が生じる。
しかし、ロレックス高精度クロノメーター基準では、ケーシング後の状態で平均日差が−2〜+2秒である為、仮に日々最大値の2秒進んでも30日で60秒となり、ひと月で約1分の誤差で納まる。
受け手側によって、印象はバラバラになるだろうが、従来の数値に慣れている人間からすると、機械式時計の誤差としては驚異的な数字と感じる。 特別な1シリーズのみではなく、防水やパワーリザーブ等の仕様が異なるクラシックラインからスポーツラインまで、全ての時計に当てはまることが、更に驚きである。
なお、新基準のモデルは、付属品のクロノメータータグが、レッドからグリーンに変更されている。
まとめ
ロレックス高精度クロノメーターとは、もはや称号ではなく、高品質の証みたいなもの。この新基準がスタートした2015年は、7月1日以降の保証書の国際保証期間が2年から5年へ延びたという年でもあり、製品への自信の高さが伺える。今後も、更なる進化が起きるのかユーザーの一人として楽しみに待ちたいと思う。