時計とローマ数字の永遠の謎 ― 『Ⅳ』と『IIII』の不思議
2025-09-16 11:00
こんにちは。エバンスの大貫です。 今回は時計の文字盤によく見られる「ローマ数字」についてご案内したいと思います。
私たちが日常で使っているアラビア数字(1, 2, 3…)とは違い、ローマ数字は古代ローマに端を発し、2000年以上の歴史を持つ数字表記法です。現在でも王や教皇の称号(例:レオ14世/ Leo XIV) 、特定の製品のナンバリング(例:ドラゴンクエストⅢ)、そして時計の文字盤に息づいています。

ローマ数字の起源と基本の文字
ローマ数字は、古代ローマ人が生活の中で数を表すために工夫したものです。羊の数を数えたり、戦利品を記録したり、あるいは暦を刻んだりといった場面で用いられました。
基本となる文字は7つ。
- Ⅰ = 1
- Ⅴ = 5
- Ⅹ = 10
- Ⅼ = 50
- Ⅽ = 100
- Ⅾ = 500
- Ⅿ = 1000
この7種類を組み合わせることで、さまざまな数を表すことができます。

【M (1000) + CM (900) + L (50) + XX (20) + II (2) = 1972】
ローマ数字の「基本ルール」
ローマ数字には大きく分けて二つのルールがあります。
1. 加法(足す)
大きな数字の後に小さな数字を置くと、その分を加えます。
- Ⅷ = 5 (Ⅴ) + 3 (Ⅲ) = 8
- ⅩⅤ = 10 (Ⅹ) + 5 (Ⅴ) = 15
2. 減法(引く)
大きな数字の前に小さな数字を置くと、その分を引きます。
- Ⅳ = 5 (Ⅴ) – 1 (Ⅰ) = 4
- Ⅸ = 10 (Ⅹ) – 1 (Ⅰ) = 9
- ⅩⅬ = 50 (Ⅼ) – 10 (Ⅹ) = 40
この「加減法」によって、ローマ数字は1から3999程度まで比較的わかりやすく表すことができます。
なお4000以上の数は「Ⅳ̅」(上にバーを引いて1000倍を意味する)などの拡張表記が使われることがあります。理論上は限りなく数を表せますが、現実的には大きな数を書くのは非常に煩雑。またローマ数字ではゼロの概念が無く、1以下の『0』は表現できません。
時計とローマ数字
時計の文字盤におけるローマ数字は、1から12の範囲に限定されますので、比較的分かりやすいものの、そこには単なる数字以上の意味合いがあります。
- クラシカルで格式のある雰囲気を演出できる
- 視認性が高く、装飾的にも美しい
- 古代からの伝統や歴史を感じさせる
特にドレスウォッチやアンティーク調のモデルでは、ローマ数字が好まれる傾向があります。

「IV」か「IIII」か? 時計における4の表記
時計の世界で謎とされているが、ローマ数字「4」の表記です。
通常のルールなら「4 = Ⅳ」ですが、時計の文字盤では「IIII」と記されることがほとんど。なぜでしょうか?
諸説ある理由
- デザイン上のバランス
IVとVIが見分けにくく、左右対称位置にあるVIIIとのデザイン上のバランスをとった説 - 歴史的慣習
ヨーロッパ中世の17世紀頃までは、「IIII」の方が一般的だった説。 - 視認性の問題
Ⅰが4つ並んでいた方が直感的に読み取りやすい、という実用的な理由。 - 王のこだわり
フランスの王、シャルルⅤ世が14世紀に宮廷の時計(1370年完成。パリのシテ島に現存)を作らせた際に、 自分の称号と同じⅤからⅠを引くⅣは縁起が悪いということで 、文字盤の数字を変えたことがきっかけとなる説
いずれの説も興味深く、明確な答えは存在しません。むしろ「IIII」と「Ⅳ」という違いそのものが、時計の奥深さやブランドの美意識を表すポイントになっています。

Ⅳの使用例
時計の場合は、「IIII」の表記が一般的となっていますが、一部モデルによって「IV」表記も見られます。
同じローマ数字の文字盤でも、「4」の書き方をどうするかで雰囲気は違うかも?個人的に「視認性」はあまり変わらない気がします。
カルティエ マストタンク

パテックフィリップ アニュアルカレンダー

ブライトリング クロノマット 日本限定モデル

まとめ
ローマ数字は、古代ローマから受け継がれる数字表記であり、時計の文字盤においてはクラシックな魅力を演出する大切な要素です。
「4」を「 IIII 」と書くか「 Ⅳ 」と書くか――。その違いひとつにも、時計職人たちの美意識やブランドの歴史が表れています。
次にローマ数字の時計を目にしたら、ぜひ「その4はどちらの表記か?」に注目してみてください。きっと時計の世界がより奥深く感じられるはずです。