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パテックフィリップ「5110P ワールドタイム」

2023-05-23 11:30

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本日はパテックフィリップから「Ref.5110P ワールドタイム」のご紹介です。

ワールドタイムとは①

最初のワールドタイムは、1935年に独立時計師である”ルイ・コティエ”が文字盤上の24時間表示のリングを主要都市に合わせて時刻を知ることができる機構を発明、1937年にパテックフィリップが製品化をしたのが世界初の角形腕時計のワールドタイム「Ref.515HU」でした。

その後現在の形に近い丸形へと仕様が変更された「Ref.1450HU」を発表、1939年には主要都市が合計41も”手彫り”で記された回転ベゼルが装着され、初代に採用された丸い形の短針を備えて、素材もプラチナが追加されました。 このモデルは2002年のアンティコルムオークションで驚異の7億円超えで落札され、当時の世界最高価格を樹立し世界中の愛好家達をあっと驚かせました。

1953年に発表された「Ref.2523HU」には、レア文字盤だった”クロワゾネ”が再登場。クロワゾネとは細い金で枠を作り、その中に釉薬(ゆうやく)を流し込んで焼き上げるエナメルのことです。(下写真)すべて熟練職人の慎重な手作業による技法で、何年経っても色褪せることのない美しい芸術作品です。そしてこのモデルから、都市表示を回転ベゼルではなくインナーベゼルへと変更、9時位置のリューズで操作をするという現在のモデルにグッと近付きました。

そして2000年、今回ご紹介する「Ref.5110」が登場。一番の改良点はリューズでしか操作できなかったインナーベゼルが、プッシュボタンひとつで操作できるようになったという画期的な技術です。プッシュボタンを一度押すと時針が単独で動き、24時間と都市のリングが連動、プッシュボタンを何度か押して現在いる都市名を12時位置に持って来ると他の都市の時刻が確認できるという仕組みです。

例えば、日本国内で使う場合プッシュボタンで「TOKYO(東京)」の文字を12時位置に合わせた後、リューズで現在時刻(24時間リングに太陽と月の絵があり、昼夜の時刻が合わせやすい)に合わせると、一目で他の都市が今何時か分かる。という非常に簡単な操作なのに、ものすごく便利で凄い技術を持ったモデルなんですよ、ワールドタイムって。しかもリューズで時刻を止めたり等行う必要がなく、プッシュボタンを押すことで精度に影響を及ぼすこともない、大変実用性のある腕時計へと進化したのです。

キャリバーは「Cal.240HU」で、これまでモデルの型番に付いていた”HU”はRef.5110より廃止になり、5110Pのように末尾は素材の頭文字(J…イエローゴールド・G…ホワイトゴールド・R…ローズゴールド・P…プラチナ)となりました。ちなみに”HU”とはフランス語のHeure Universelle(世界時間)のことで、Cal.240HUはRef.5110の後継から現行ワールドタイムRef.5231にも採用されている大変優れた名機なのです。

ワールドタイムとは②

世界の主要都市24か国の時刻を知ることができる機能付きの時計のことです。
パテックフィリップのワールドタイムは、10時位置にある四角いプッシュボタンを押すことで文字盤ディスクが回転し、瞬時に時刻を読み取ることができます。

24か国の主要都市を調べてみました。TOKYO(東京)から時計回りに、NOUMEA(ヌメア※ニューカレドニアの首都)、MIDWAY(ミッドウェー※アメリカ領の島)、ANCHORAGE(アンカレジ※アラスカ州の都市)、DENVER(デンバー※コロラド州の州都)、NEWYORK(ニューヨーク)、RIO(リオデジャネイロ)、AZORES(アゾレス諸島※ポルトガル領の島)、PARIS(パリ)、MOSCOW(モスクワ)、KARACHI(カラチ※パキスタンの都市)、BANGKOK(バンコク)、SYDNEY(シドニー)、AUCKLAND(オークランド)、HAWAII(ハワイ)、L.ANGELES(ロサンゼルス)、MEXICO(メキシコ)、CARACAS(カラカス※ベネズエラの首都)、S.GEORGIA(サウスジョージア島※イギリス領の島)、LONDON(ロンドン)、CAIRO(カイロ)、DUBAI(ドバイ)、DHAKA(ダッカ※バングラデッシュの首都)、HONGKONG(香港)です。

ワールドタイムには二種類あり、24時間針で二ヶ国目の時刻を表示するもの(GMT)と、こちらのモデルのように主要都市を組み合わせ、現在の時刻を基準として時差を表示するものの二つです。ちなみに国際基準時のUTCとは「協定世界時:Coordinated Universal Time」のことで、セシウム原子時計(数千万年に一秒の誤差という世界で最も正確な時計)を基に定められた時刻のことです。

GMT(グリニッジ標準時:Greenwich Mean Time)との違いは、測定方法が異なりGMTは正午からの測定、UTCは午前0時からの測定です。
ちなみに、日本標準時はJST(Japan Standard Time)と呼ばれ、協定世界時より9時間進んでいます。仕事や趣味で世界中を旅する人、いろいろな国に興味がある人、複雑時計が好きな人へ、実用性抜群なRef.5110を是非おすすめしたいです。

5110とは

2000年から2005年の僅かな間しか生産されなかった、ワールドタイムの中の傑作と言っても過言ではないモデルです。先程も少し触れましたが、これまでにはない革命的な改良されたムーブメント、しかも37mmサイズ、そしてもちろん薄型のドレスウォッチと非の打ち所がない素晴らしい腕時計だからです。

というのも、後継モデルであるRef.5130は39mm、現行のRef.5231は38.5mm、フライバック機能付きのRef.5930は39.5mmとどれも少し大きめの作り。厚みも後継モデルは10mm超えなのにも関わらず、Ref.5110は10mmあるかないかの薄型なのです。素材は今回ご紹介するプラチナの他、イエローゴールド、ホワイトゴールド、ローズゴールドがあり、一番人気なのがプラチナです。文字盤色はプラチナのみ特別色の”ブルーグレー”(他素材は白)で、一際特別な存在感を醸し出しています。そして着けた人だけが楽しむことのできる、ケースサイド6時位置の一粒のダイヤモンドが、プラチナならではの醍醐味であり、優越感を得ることができるポイントのひとつです。Ref.5110Pを所有することは、この上ないステイタスなのです。

今回ご紹介する5110Pには、”Jean Rousseau(ジャンルソー)”の特注革ベルトが着いています。ジャンルソーとは、フランスのパリ創業の老舗で、上質な革を目利きの職人が一枚一枚選び抜き、卓越した技を用いてひとつひとつの革製品を作り上げる、革製品界では知らない人はいない著名なブランドです。同社はいろいろな革製品の開発を行っており、オーダーメイドも手掛けています。今現在ではパリの他、日本、アメリカ、イギリス、マカオにブティックを構えています。

今着いているジャンルソーの特注カラーの革ベルトは、文字盤のブルーグレーの色味を更に引き立たせる絶妙なブルークロコで、裏地はなんと鮮やかなオレンジという人とは一味違った雰囲気を楽しめる一本となっています。バックルは皆大好きなカラトラバ十字の丸いモチーフのDバックルで、時計本体の薄さと着け心地のよい革ベルト、プラチナの心地よい重み。この特別な5110Pは着けた瞬間に極上の満足感が得られることでしょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。ワールドタイムの魅力を少しでも感じていただけていましたら幸いです。
こちらのモデルは私の大切な顧客様からのご委託品です。この記事を読んで気になられた方は私までお知らせください。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

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