ヒエラルキーの外側へ「9F」グランドセイコー
2024-04-23 11:00
いつもエバンスブログご覧頂きましてありがとうございます、銀座エバンスの福永です。
今回の国産高級時計の雄、グランドセイコーについてご紹介してまいります。
高級時計の分野において大きなシェアをもつスイス製のブランドとは、その雰囲気から大きく異なる独自の世界観を持つグランドセイコーですが、中でも印象に残るのがクォーツモデルの存在ではないでしょうか。
グランドセイコーが注力するクォーツモデル、高級時計市場における独自のポジション、そして他にはない魅力に迫ってみたいと思います。
グランドセイコーの現在
グランドセイコーがセイコーブランドから独立して久しいですが、その人気知名度は年を追うごとに急速に拡大し、魅力的な製品も次々に誕生しています。
世界屈指の技術力を持って作り上げらえるグランドセイコーは、その優れた性能面に加え、特にダイアル製作に並々ならぬ拘りを見せ、中～高価格帯のモデルを中心に日本ならではのモチーフ、例えば製造拠点である雫石や諏訪で見られる自然風景や、繊細な季節の移ろいを巧みに表現するなど、ヴィジュアル面でも日本ならではの時計作りを進め唯一無二の存在として認知されています。
一方でグランドセイコーのデザインは、外装の設計からダイアルのレイアウトに至るまで、「セイコースタイル」と呼ばれる時代を超えて継承されるデザイン方針を元に設計され、何時、何処で、誰が見てもグランドセイコーを認識できる普遍的なスタイルを確立しています。
グランドセイコーは国産高級時計の雄として国内はもちろんの事、北米、アジア、欧州など多くの国や地域で高い需要を獲得するに至っています。
唯一無二の9Fムーブメント
グランドセイコーのウェブサイトを開いてみると、 そこには機械式の「9S」、スプリングドライブの「9R」、そしてクォーツの「9F」と3種のムーブメントが紹介されています。
なかでもクォーツの「9F」に関しては、時計業界の常識を覆し腕時計の裾野を広げたクォーツムーブメントを祖に持ち、1993年以降グランドセイコー専用の「9F」はゲームチェンジャーとして歴史を塗り替え続け、セイコーならではの技術が凝縮されたそれは、他社が到底追いつくことが出来ない高みに到達したと言えます。
「9F」の特徴の一例をあげるならば、クォーツ式時計としては初の瞬間日送りカレンダー、太く重い針を駆動させるツインパルス制御モーター、クォーツ式では類を見ない精度の微調整が行える緩急スイッチなど、機械式とは異なる方法で時計作りを極め、時計の要となる精度に関しては年差±10秒と圧倒的な高精度を実現しています。
積極的に選びたいクォーツモデル
一般的に高級時計と言えば「機械式」という認識が浸透していますが、語弊を恐れずに言うのであれば、精密な機械の組み立てには職人の手作業によるところが多く大量生産が難しいと言った、ある種の神話めいたものを消費者が盲信している側面があるのかもしれません。
一方で機械式時計と対を成すように、多くのブランドにおいてクォーツモデルはエントリークラスに位置づけらる事も多いですが、グランドセイコーにおいては、クォーツ搭載モデルであっても極めて優秀なムーブメントに加え、外装面の品質における物足りなさも感じられず、全体として良い時計にまとまっている印象を受けます。
懐かしくも新しいグランドセイコー
海外の方の目に映るグランドセイコーは、多くの日本人が抱くそれとは異なり、遠く極東の島国で作られる神秘的な時計ですが、日本人から見たグランドセイコーは何処かノスタルジーを感じる存在かもしれません。
中でもヘリテージコレクションに属するモデルは、目にする機会も多く、長年に渡り慣れ親しんだスタンダードなデザインを持っています。
クォーツモデルの正確で真面目な印象は、グランドセイコーが掲げていた「最高の普通」そのものであり、優れたクォーツ時計は人生のよきパートナーとなる素質を十分に備えています。
そして、今まで多くの高級時計に触れてきた方にこそ、お試し頂きたいのがグランドセイコーのクォーツモデルであり、一般的な高級時計のイメージを良い意味で払拭してくれる、時計の格付けやヒエラルキーといったものの外側にある存在、それこそがグランドセイコーのクォーツモデルと言えるのではないでしょうか。