クォーツ時計のオーバーホール事情
2025-11-11 11:00
こんにちは、エバンスの大貫です。 今回は「クォーツ時計のオーバーホール」についてお話ししたいと思います。
自動巻きや手巻きといった機械式時計のオーバーホールを気にされる方は多いと思いますが、クォーツ時計のメンテナンスについては、あまり意識されていのではないでしょうか。
「そもそもクォーツ時計にオーバーホールは必要なのか?」
「どのくらいの周期で行えばいいのか?」
今回は、その疑問を分かりやすく解説していきます。
クォーツ時計もオーバーホールが必要
かつては「クォーツ=使い捨てウォッチ」と言われていた時代もありました。
電池で動くため、止まったら電池交換すればOK――そんなイメージを持っている方も多いでしょう。
しかし、現在ではグランドセイコーやカルティエ、タグホイヤー、シャネルなどから高級クォーツモデルが多く登場しています。それらは精度・耐久性ともに優れ、長く愛用するためのメンテナンスが求められます。
つまり、「クォーツ=使い捨て」ではなく、“手をかけて使い続ける” 時計になっているのです。

クォーツ時計と機械式時計の違い
まず、クォーツ時計と機械式時計の基本的な違いを整理してみましょう。
| 基本情報 | 機械式時計 | クォーツ時計 |
|---|---|---|
| 動力源 | ゼンマイ | 電池 |
| 精度 | 日差±15秒前後 | 月差±15秒前後 |
| 主な構造 | 歯車・テンプ・脱進機など | 歯車+電子回路+水晶振動子 |
| メンテナンスの目的 | 摩耗・油切れ・精度調整 | 摩耗・油切れ・電子接点の保護 |
「クォーツ=電子回路で動く」と思われがちですが、実際には電子回路はムーブメントの一部にすぎません。針やカレンダーを動かすための歯車やレバー類など、機械式時計と同様に多くのパーツが使われています。
そのため、長年使えば油が乾き、摩耗や動作不良を起こすこともあります。
つまり、機械式時計と同じようにオーバーホールが必要なのです。

クォーツ時計のオーバーホールについて
クォーツ時計のオーバーホール(分解掃除)では、 ムーブメントを完全に分解し、部品の洗浄・注油・組み立て・調整を行います。
さらに電子回路の動作確認や、電池・パッキンの交換、防水性能の点検も行われます。
オーバーホールの目的は主に以下の3点です。
- 油切れの防止と再注油
- 電子回路やモーター部の動作確認
- 防水性能の維持と劣化部品の交換
見た目は問題なくても、内部では油の乾きや腐食が進行しているケースもあります。 特に夏場の湿気や汗によるダメージは、クォーツでも大敵です。
オーバーホールのタイミングは?
クォーツ時計のオーバーホール時期は、メーカーやモデルによって異なります。
目安としては以下のように考えると良いでしょう。
| 目安となる周期 | |
|---|---|
| 電池交換の場合 | 約2~3年ごと |
| クォーツ時計のオーバーホール | 約7年~10年ごと |
例えばカルティエでは、「電池交換2回に1回のオーバーホール」を公式に推奨しています。これは、電池交換時にムーブメント内部の状態をチェックし、必要に応じて早めにメンテナンスを行うための目安です。
オーバーホールの目安は機械式が一般的に『3~5年』なのに対し、クォーツ式ではおおよそ『7~10年』が目安とされています。しかしながら電池交換の頻度が短くなったり、電池交換をしても動きが鈍いなどの不具合があれば、オーバーホールを行った方が良いでしょう。

放置するとどうなる?
クォーツ時計を長年放置すると、以下のようなトラブルが発生することがあります。
- 電池の液漏れによる基板腐食
- 歯車や軸の摩耗・固着
- 防水パッキンの劣化による湿気侵入
- モーター部の故障による針の停止
これらの症状が進行すると、修理費が高額になったり、場合によっては修理不能になることも。定期的なオーバーホールは、結果的に時計を長持ちさせる最良の方法なのです。

まとめ ― クォーツ時計も“手をかける時代”
クォーツ時計は、精度の高さと扱いやすさから「メンテナンス不要」と思われがちです。しかしながら内部には機械部品が多く使われており、定期的なオーバーホールによるメンテナンスが不可欠。
もしお気に入りのクォーツウォッチを長く愛用したいなら、電池交換2回に1回の点検・オーバーホールを目安に考えてみてください。
「使い捨て」ではなく、「育てる時計」として――
クォーツウォッチにも、きちんとしたケアをしてあげましょう。